こだわりを持つ男、憧れますよね~。
でも反面、頑固で融通が利かない人間になる可能性もあります。
イラストの世界でも同じ、時にその「こだわり」が足かせになる場合があります。

ぼくは新人のころ、下のようなイラストを描いていました。

髪の毛の色はピンクやら黄色やらカラフルに、そしてアウトラインは赤黒く!
目と耳はぐるぐる3重マルでインパクトを!

これが自分の個性だと、こだわりをもってやっていました。

しかしこの色彩について、いろいろな所で物議を醸し出すことになりました。
カットはこれで良いけど、本や雑誌の表紙のイラストではアウトラインを黒くしてほしいとか、髪の色も普通に茶色や黒にして欲しいと言う依頼が相次いだのです。
こだわりをもってやっていましたから、正直気分の良いものではありませんでした。
偉そうに「絵的にはこっちのほうが面白いはずなんですが・・・」なんて反論したこともありました。

しかし、思わぬところで転機がやってきました。

ある発注で3cm×3cmのカットを描いてくれと言われたのです。

・・・・

サイズが小さすぎて、目と耳のぐるぐるが超描きにくい!!!
つうか潰れちゃうじゃん!!

まさにこだわりが足かせに!!

そんな時ふとボクの頭にある曲が流れてきました。

「つまら~ぬこだ~わりは~♪身を縮めるだけだった~♪」(しゃぼん玉/長渕剛)笑

!!
もしかして、このこだわりって自分で勝手にこだわってるだけなんじゃないか?
足かせになってしまうこだわりって何なんだ??

考え抜いた末、目と耳のぐるぐるをやめてみました。

するとどうでしょう。
無駄な力が抜け、本当に描かなければならないところに集中することができ、カラフルな色彩やアウトラインの色についても柔軟に考えられるようになり、臨機応変に対応することができるようになったのです。
また、元々カラフルな色彩には時間もかかっていたので、その時間が短縮されることにより、逆に線を描くことに時間をかけられるようになり、自分の思っているようなイラストを描けるようになっていきました。

その結果がこれ♪

前の絵が悪いというわけではないのですが、今の絵の方がより自分にあっているなと思っています。
「フ」や「コ」の口(くち)なんて、前の「こだわり」のままでは絶対に生まれなかったと思います。
どうしても捨てにくい「こだわり」ですが、完全に捨てなくてもちょっとゆる~~くしてみるだけで、新しい発想が生まれることもあるのではないかと感じました。

淋々と泣きながら はじけてとんだけど
もっと君は君で ありますように
いったい俺たちはノッペリとした 都会の空に
いくつのイラストを 打ち上げるのだろう?(元曲:しゃぼん玉/長渕剛)笑